新入生の皆さんご入学おめでとうございます。在校生の皆さん初めまして。私は4月から中等部・高等部校長として新たに皆さんの仲間に加わりました。
1901年に開校した本校は100周年である2001年に国分寺の地に移り、その翌2002年に男女共学、初等部開設という大変革を遂げ、今日に至っています。この3月に初等部一期生が初めて大学を卒業しました。高等部から入学した生徒、中等部から入学した生徒はすでに大学を卒業し社会で活躍していますが、初等部から入学した生徒が大学を卒業したことで、大学までの一貫教育がようやく完成したことになります。卒業生の活躍によって本校にさらなる歴史と伝統が刻まれていきます。
さて、新入生の皆さんは、今どんな気持ちですか?新しい環境、新しい仲間と始まるこれからの日々が楽しみでワクワクしているでしょうか?それとも不安と緊張でドキドキしているでしょうか?新入生を迎える在校生の皆さんはどうでしょうか?
私は新しい出会いのある4月が大好きです。私は早稲田実業では授業を持ちませんが、大学で授業を担当しています。毎年この時期は、教室にはどんな学生がいて、授業にどんな反応をし、どんな質問があるだろうか?大学の授業の多くは選択制ですから、取りたい人が授業を登録します。そもそも教室に学生がいるだろうか?誰もいないなんてことないよな?なんてことも含めワクワクします。
4月は人々に強制的な変化をもたらします。全く何も変わらずに4月を迎える人は誰もいません。違いがあるとしたら、変化の受け止め方です。変化をどう受け止めるか。変化を自分の成長につなげていくことができるか。みなさんには4月という変化の時をうまく利用してもらいたいと思います。
私は4月から校長として早稲田実業の一員となったというこの変化にワクワクしています。皆さんと一緒にここで学び、成長していけることを楽しみにしています。
学校というものは建物、器だけでできているわけではありません。そこで学ぶ生徒、教える先生がいて初めて成り立つものです。家族や家庭と同じですね。皆さんには帰る家がある。一軒の家だったりマンションだったり形や大きさは様々だけど「家」がある。でもそれだけで「家族」ができるわけではないですよね。
私の家は東京の郊外にある2階建ての家です。家には私と妻と子供2人、子供といっても2人とももう社会人ですが。あと犬が1匹と猫が3匹住んでいます。家という建物と、人間4人とその他4匹のあわせて8つの生き物で「家族」が成り立っています。人間が4人もいれば喧嘩もしますし、4人が時と場合によって3対1になったり2対2になったりします。猫たちも同じです。犬と猫と人間のあいだでも同じです。人間と犬猫あわせて8つの生き物が社会を作り、毎日毎日違った関係を形づくっています。
同じ家に20年近く住んでいますが、その間に既に2匹の猫が亡くなり、見送っています。でもしばらくすると誰かが新しい猫を連れてきます。結果的にいつも4人と4匹なのですが、新しい猫が加わると猫たちの関係性が変わります。そして家族全体の関係性も変わっていきます。こうして、外から見ると何年も変わらないように見える「村上家」も中では常に変化が生じていて、新しい「村上家」に変わり続けています。
学校も同じです。新たな仲間が加わることによって早稲田実業という学校はまちがいなく変わっていきます。3月に卒業生を送り出し、4月に新入生を迎え入れる。1/3も入れ替わるわけです。学校の中身が変わらないわけはありません。
皆さん方には、新たに仲間に加わるものとして、あるいは新たな仲間を迎えるものとして、自分たちが学校を作り、歴史を作っていくんだという意識を持っていただきたいと思います。今日から始まる早稲田実業はみなさんが作り出す新しい学校なのです。伝統とは、変化しないことによって守られていくのではなく、常に変化することによって守られ、作り上げられていくものです。
これは4月から新たに仲間に加わった私自身への言葉でもあります。一緒に新しい早稲田実業を作っていきましょう。一緒に成長していきましょう。
原載:『早実通信』193号(2018年4月)