新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。早稲田実業学校へようこそ。
例年ですと早稲田大学の大隈講堂での入学式から新年度が始まりますが、今年は例年とは違う形のスタートとなりました。
本校は1901年に設立されました。設立当初の校名は早稲田実業中学でした。それから100年にわたり早稲田の地で多くの人材を育ててきました。そして、創立100周年である2001年に早稲田から国分寺に移り、翌2002年に男女共学、初等部開設という大変革を遂げ、今日に至っています。皆さんが本校に入学した今年は、国分寺に移転してから20年目、創立から120年目ということになります。本校にはとても長い歴史があります。
この長い歴史の中で様々な出来事を受け止めてきました。1923年9月1日には関東大震災がありました。学校自体の被害は比較的軽微なものでしたが、罹災した教職員、生徒は500名に及び、10名の生徒が亡くなりました。1945年5月25日の空襲では校舎が全焼し、戦後は一からの再スタートとなりました。2001年の国分寺移転後も、2011年3月11日に発生した東日本大震災により、卒業式が取りやめとなり、入学式も大隈講堂ではなく本校の体育館で挙行されました。
昨年末に中国の湖北省武漢市で始まった新型コロナウイルス感染症の流行が国境を越え、世界各地に広がっています。3月11日にはWHOからパンデミック相当であるとの見解が示されました。国と国との間の人の移動の制限、一部地域の封鎖、学校の休校、諸機関の閉鎖、イベントの中止などの対策がとられています。
本校では3月2日から臨時休校の措置をとりました。中高等部では学年末試験をあと2日残した時点でしたので、学年末試験の準備がしっかりできていなかった人にとってはうれしい知らせだったかも知れませんが、しっかり準備していた人には悔しい思いをさせてしまいました。キャッツやライオンキングの観劇もなくなりました。海外研修も中止になりました。部活、同好会、委員会活動なども全て行われない3月となってしまいました。例年行われている体育館での卒業式も中止となりましたし、各クラブが卒業生を送り出す三送会も今年はなくなりました。学年末の貴重な学びの機会、友人と触れ合う機会を奪ってしまったことを申し訳なく思っています。
私たちは日々人と接して暮らしています。本校の校是である三敬主義、「他を敬し、己を敬し、事物を敬す」も、人とは他者と共に生きるものであるということを前提としています。日々人と接している以上、完全には感染を避けられない。どうしたら感染する可能性をより少なくできるかということが、これまで行われた、そしてこれから行われる対策の根底にある考え方です。
4月から新しい年度が始まります。新型コロナウイルス感染症の流行はおさまっていませんので、様々な制限がある中でのスタートとなります。
感染する可能性がより少なくなるような環境を整えること。そこで皆さんにしっかりと学び成長してもらうこと。これが今、私たちに課せられている最も重要な責務です。しかしそれを実現するためには皆さんの協力も必要になります。感染する可能性がより少なくなるような環境が整えられても、その中で過ごす人が感染に対して無頓着であれば効果はありません。あらためて、自分自身が感染しないため、他人を感染させないためには何をすべきか/何をすべきでないかをしっかり考えた上で行動してください。また休校期間を含め、これまでとは比べものにならない長い春休みが明けた今、あらためて学校で友人たちと一緒に学ぶことの意味をかみしめてもらえたらと思います。
4月からは新しいメンバーで新しい早実がスタートします。共に切磋琢磨し、学び成長し、創立120年目の早実を皆さんの力で形づくっていってください。
皆さんの成長を期待しています。
原載:『早実通信』202号(2020年4月)